PoW と PoS の違い、マイニングとステーキングの違い

ブロックチェーンと合意形成アルゴリズム

日本円は日本という国が管理しているため、国に「預金をすべて没収します」と言われても国民は拒否することができません。日本では実際に1946年に預金封鎖が実施され、給与の一部は強制的に預金させられたり、1日あたりの引き出し額が決められたりしていました。近年でもベネズエラでハイパーインフレが起きたりと、国の通貨は意外と価値保存の手段としては役に立たないことがわかります。最近の先進国は関係ないと思うかもしれませんが、日本円やアメリカドルの購買力は右肩下がりに落ちています。

アメリカドルの購買力
(参照元:https://howmuch.net/articles/rise-and-fall-dollar)

国の通貨のように、特定の組織が流通の権限を持っている通貨は「中央集権型」と言えますが、ビットコインなどの暗号資産は”ブロックチェーン”という「非中央集権型」の技術が使われていて、通貨の流通を制限することのできる組織はありません。ネットワーク参加者全員がお互いの取引を監視し合うことで取引の公平性が保たれています。誰も他人の取引を中断することはできませんし、ビットコインのネットワークを完全に止めるためには、世界中のパソコンのインターネットを同時に切断する必要があります。

ビットコインは参加者全員で管理していると言いましたが、誰でも自由に取引の記録を書けてしまうと非常にまずいことになります。例えば、1ビットコインしか持っていないAさんが「BさんとCさんに1ビットコインずつ送りました!」と記録を書いてしまったら、存在しないはずの1ビットコインがシステム上増えてしまうことになります。こういった問題を防ぐため、ブロックチェーンでは”合意形成アルゴリズム”という仕組みを通して、正しい取引のみが記録されるようになっています。

PoW(プルーフ・オブ・ワーク)

ビットコインなど初期に作られたブロックチェーンの多くには、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)という合意形成アルゴリズムが使われています。PoWでは、膨大な計算処理(特定の数値を見つけ出す)を終えたパソコンに取引を記録する権限が与えられ、過半数のパソコンが記録した取引を正しい取引だと認定します。また、正しい取引を記録すると報酬が貰え、特定の数値を見つけ出して報酬を得る構図が貴金属の採掘に似ていることから、PoWで報酬を得る人達を”マイナー(Miner, 採掘者)”と呼び、PoWに参加することを”マイニング(Mining)”と言います。不正取引を記録しようとすると報酬が貰えなくなり、膨大な計算処理で消費した電力が無駄になります。

PoWのマイニングによって取引の正しさは保証されますが、マイニングによって生まれる弊害もあります。膨大な計算処理で大量の電力を消費しており、2021年2月現在、ビットコインはアルゼンチンやオランダが一国で使用するよりも多くの電力を消費しています。また、1秒間に処理可能な取引の数も限られていて、最大7つの取引しか記録することができません。

黄色線=ビットコインの使用電力の推移
(参照元:cbeci.org)

PoS(プルーフ・オブ・ステーク)

そこで新しく登場した合意形成アルゴリズムが、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)です。PoSでは、取引の記録者がまず初めにある程度の金額を担保(ステーク)として提出します。不正な行動をしたら担保は没収されてしまいますが、正しい行動をし続ければ報酬が貰えます。ステーキングには無駄な計算処理が発生しないため、電力は殆ど消費しません。

ただ、PoSはメリットだらけかと言えばそうでもなく、記録者が多ければ多いほど記録すべきデータ量が多くなり、1秒間に処理可能な取引数が下がるという問題があります。なぜなら、記録されるデータには「誰が」「誰に」「どのくらいの通貨」を送ったかという情報以外にも、「誰が記録したか」という情報も書く必要があるからです。この問題を解決するために、イーサリアムは記録者のデータを集計して簡素化するAggregated attestationというアプローチを取っているに対し、バイナンススマートチェーン(BSC)やイオス(EOS)は記録者の人数を制限してデータ量を減らすDPoS(Delegated−PoS)というアプローチを取っています。どちらが正しいアプローチかは評価する尺度によって変わりますが、誰でも記録者として参加することのできるイーサリアムの方がブロックチェーンの「非中央集権」という哲学に寄り添っていて、セキュリティがより高いと言えます。

まとめ:マイニングとステーキングの違い

まとめると、合意形成アルゴリズム「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」では膨大な計算処理をするマイニングによって正しい取引が保証されていていて、不正取引を記録しようとすると報酬が貰えず消費した電力が無駄になり、これが不正行為の抑止力となっています。一方で、「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」では担保金のステーキングによって正しい取引が保証されていて、不正取引を記録しようとすると担保金が没収され、これが不正行為の抑止力となっています。